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2008年09月02日

魔女の鉄鎚

角川文庫今月の編集長恩田陸さんの推薦書です。
ダヴィンチ・コードなみにおもしろい!のにあまり評判にならなかったとのこと。
「実在する」魔女狩りの手引書をめぐるミステリーです。

ビアトリスの父は貴重な古書を収集するのが趣味の外科医だったが、
魔女裁判の実践書『魔女の鉄槌』を手に入れてまもなく、何者かに
惨殺される。めちゃくちゃに荒らされた室内を整理しながら、ビアトリスは
『魔女の鉄槌』だけが部屋の中から消えていることに気付く。その本の
行方を追いかけていくうちに、彼女はキリスト教会の闇の歴史がかかえる
ある『真相』を知ることとなる。

けっこうドギツイ描写ですが、読者に「実際にこういう事件が起こるかも
知れない」と思わせる説得力もあります。女性のエロスがテーマという
ことで主人公があんなことやこんなことをするのですが、こういう願望って
女性は持っているんでしょうかね。

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2008年08月12日

『マイナス・ゼロ』広瀬正

48歳で早世した広瀬正の長編タイムトラベルSFです。
広瀬正は高校のころ、『ツィス』や『鏡の国のアリス』を
読んでおもしろいと思っていたのですが、この『マイナス・
ゼロ』は未読だったので、興奮しながら買いました。

始まりは終戦間際の東京。中学二年生の浜田俊夫は
空襲で息を引き取ろうとしている隣家の先生から「18年後
にまたこの場所に来てほしい」と不思議な依頼を受ける。
そして約束の日、彼の前に現れたものは・・・。

ボリュームのある長編ですが、おもしろくてどんどん読めて
しまいます。昭和初期の描写が緻密で臨場感があるのに
加え、作品の舞台である昭和38年の東京も現在からすると
『過去』の世界なので、二重にタイムトラベル気分を味わえ
ます。
ただ、読後のスッキリ感はあまりありませんでした。解決
されない謎も多く、パラドックスがそのまま残されていて、
じゃあこの人はいったいどこから来たんだ!!と叫びたく
なりました。

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2008年08月05日

『オンリィ・イエスタデイ』 志水辰夫

冷たい雨の夜、女を拾う・・・というシチュエーションについ触手が
動いてしまいました。

池内峻介は突然現れた女を助け、車に乗せた。女はほとんど服を
着ておらず、何者かに追われていた。女の指示するまま峻介は
車を女の自宅に走らせたが、そこもすでに追っ手に先回りされて
いた。峻介は女を自分の住むマンションに連れ込んだが、
女はどんな男も信用しない種類の女だった。

ミステリーの要素あり、男女の絡みありで、読んでいてひき込まれます。
私は電車を二駅も乗り過ごしてしまいました。
圧倒的な敵に立ち向かっていく様はハードボイルドの真髄です。

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2008年07月30日

『玄冶店の女』 宇江佐真理

日本橋に玄冶店(げんやだな)と呼ばれる路地があり、
元花魁のお玉は小間物屋をしてそこに暮らしていた。
身請けされた旦那からは縁切りをされ、自分の力で
なんとか生活の道を切り開くお玉。玄冶店の周りには
彼女の他にもたくましく生きている女たちがいた。
彼女たちの友情や恋愛、家族への情愛など江戸の人情に
あふれる短編集です。

「おトミさん」の最後の一節に出てくる「エッサホー、
玄冶店」の意味は私にとって長い間意味不明の言葉
でした。路地の名前だったんですね。
やたらと銭湯の場面が出てきて主人公たちが本音で語る
重要なポイントになっています。これでは映像化は困難
でしょうか。

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2008年06月04日

『東京島』 桐野夏生

絶海の孤島に漂着した32人。そのうち女は
清子たった1人だった。極限の状態で果たして
彼らは生き延びて脱出できるのか。
いつしか人々はこの島をトウキョウ島と名づけ、
清子は唯一の女性として島に君臨する・・・。

販売開始を記念した桐野夏生さんのトークショーに
参加する機会がありました。桐野さんは「ロビンソン・
クルーソー」のような無人島の話がもともと好きで
いらっしゃったそうですが、戦争中に太平洋上の
孤島に男32人と女性1人が7年ほど生活した
「アナタハン島事件」という事件が本当にあった
そうで、その事件からも着想を得られたということです。

作中に「ものに名前が付けば、意味が生まれ、認識され、
世界が確立する」というくだりがありますが、「主人公に
”清子”と名前を付けたのはなぜですか?」とたずねた
ところ、「ありふれた、昭和のかおりのする名前をつけた
かった」のだそうです。

エンターテイメントを超えた、生存と性という人間の根源
をするどくえぐり出す小説です。最後はどうなるのか?
おしまいまで読者の心をつかんで離しません。

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2008年05月28日

『顔 FACE』 横山秀夫

また横山秀夫さんの短編を買ってしまいました。あまり
一人の作家にはまることはないのですが、筋書きが
とても良く練られていておもしろい。人間の醜い部分を
生々しく描く筆力は松本清張を彷彿とさせます。

本作は被害者から聞き取りをして犯人の似顔絵を描く
婦警、平野瑞穂が主人公。ご多分に漏れず、彼女も
トラウマを抱えています。

読者の裏をかく展開と結末は人をあきさせません。

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2008年05月19日

『繁殖』 仙川環

ある幼稚園の女性教諭の発案で、地元の農家が合鴨農法
で育てた鴨の肉を使った鍋パーティーが開催されたが、そこで
集団食中毒事件が発生してしまう。
矢面に立たされた女性教諭を見かねて婚約者が調査を
始める。すると吐瀉物の分析結果からカドミウムが検出され
事件の様相は一変する。誰が毒物を混入したのか?何のために?

実際の事件が想起させられ、なかなかおもしろそうなテーマ
でしたが、不発でした。ミステリーの最大のテーマである
カドミウムの混入の謎が割りと早く解明されてしまうし、
その後の主人公の行動も納得できません。それじゃあ犯罪
だろう・・・。とつっこみたくなります。これ以上はネタバレなので
かけません。こんな独りよがりの善意で○○系を崩すような
ことをして・・・。あ、もうよしましょう。

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2008年05月08日

『のぼうの城』 和田竜

手書きのタイトルにオノ・ナツメさんのイラスト、と誰もが手に取って
見たくなる装丁ながら、石田三成の忍城攻略と歴史ファンの興味を
そそるテーマ。これはただものではない本が現れたと思い、さっそく
読んでみました。
主人公の「のぼう様」こと成田長親の人物がまた独特。たとえば司馬
遼太郎の小説の主人公などは、ともすると超人的な能力と魅力を備え、
私などはかえって違和感を覚えるのですが、この「のぼう様」の無能ぶり
にはむしろ現実みを感じて、感情移入できました。
籠城に参加する農民ひとりひとりが活き活きと描かれているのも、この手の
小説には珍しいことではないかと思います。

これまでの歴史小説には飽きた方にはうってつけですし、あまり歴史物
を読んだことがない方にもオススメです。

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2008年04月22日

『子子家庭は波乱万丈』 赤川次郎

ドイツ・オーストリアを舞台にした赤川次郎の小説に、それと
対応したエッセイがセットになった単行本ということで読んで
みたのですが、小説の方は物足りませんでした。ミステリー
の要素はあまりありません。エッセイの方は、筆者の映画や
クラシックに関する豊富な知識に彩られておもしろく読めました。

今の日本の死をもてあそぶ風潮に対する批判など、
小説を読んでいてもわからない、赤川次郎本人の肉声に
触れられるのが魅力です。「死者の学園祭」の舞台挨拶で、
主演の深田恭子が原作者本人を前にして、「原作は読んで
ません」と堂々と答えたエピソードには笑いました。

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2008年04月12日

『論理と感性は相反しない 』 山崎ナオコーラ

学生のころ、塾の英語の先生が趣味で造花を作って
いたのですが、例えばバラを作る時も、現実にはない
色で作るそうです。なぜかと言えば、「造花で現実にある
花をまねてもつまらない。実際にはないものを作るから
おもしろい」のだそうです。
小説も、現実には起こらない話を作るからこそおもしろい
のかも知れません。

神田川歩美、矢野マユミズ、ボルヘスなど多彩な登場人物が
オーバーラップして登場する短編集です。
「人間が出てこない話」「架空のバンドバイオグラフィー」
など、かなり挑戦的な小説も収録されてます。

山崎ナオコーラさんはブックスタマにもひょっこり訪れてくれました。
これからも応援していきたい、素敵な方です。

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2008年03月28日

神を見た犬

ブッツァーティはイタリアの現代作家ですが、この『神を見た犬』は
幻想小説の短編集になっています。
ちょっと星新一を思い出させる作風ですが、もう少し人間の心の
奥底に踏み込んだ小説です。

ある男が病院に入院する。その病院は7階建てで、階が下になるに
つれて、病状の重い患者が入院する仕組みになっていた。男は
最初7階に入院するが、ベッドが足りないとか、治療の機械がないとか
いろいろ理由をつけられながら、徐々に下の階に移されていく。

以上が『七階』のあらすじですが、他にも惹き込まれる作品が数多く
収録されています。


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2008年02月01日

谷崎潤一郎犯罪小説集

江戸川乱歩自らが述懐する所によると、青年期の
彼にとって、もっとも刺激的な作家は谷崎であった
というから、この小説はまさに乱歩の世界の原点といえます。
大正期の退廃的な東京を舞台に繰り広げられる
精神の危ういところから発生する犯罪の数々。
谷崎一流のfemme fataleな女性の描写は垂涎です。

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2008年01月18日

『東京奇譚集』村上春樹

村上春樹の5つの短編からなる短編集です。

現代の世相を如実に描写しているかと思うと、
SFばりにぶっとんだ世界に入ってみたり。
村上春樹独特の世界です。

いろいろ描いてしまうと読む楽しみが損なわれる
のでこのくらいで。
電車の中で読むのにちょうど良い長さですので
読んでみて!

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2008年01月14日

『13階段』 高野和明

傷害致死の刑期を終えて出所した青年・三上は、
世話になった刑務官・南郷に、こう声をかけられた。
「一緒に無実の死刑囚を救わないか」
それが三上と南郷、それぞれの人生を大きく変える
事になるとも知らずに。

死刑制度をはじめ、日本の刑法がかかえる
さまざまな問題を盛り込んだ本格ミステリーです。
被害者の感情にそぐわない量刑、死刑の持つ
非人道的な側面など、今話題になっている
問題が随所に盛り込まれています。
内閣改造があると死刑の執行率が上がる、といった
笑えない話も。
江戸川乱歩賞受賞作の中でも特に評価が高いのも
うなずける作品です。

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2008年01月10日

『西の魔女が死んだ』梨木香歩

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

サーバーのトラブルのため、しばらくブログが更新できず
申し訳ありませんでした。


「西の魔女」はまいの祖母の通称。中学校に溶け込めなかった
まいは1ヶ月ほどの期間、祖母の家で暮らすことになった。
祖母はイギリス人で、田舎の一軒家でパセリやセージを育て
自給自足のような生活をしていた。そこでまいは祖母から
「魔女」の手ほどきをうける。

読むとしっとりと力づけられます。どちらかといえば短い一編
ですが、考えさせられる内容はどっしり深いです。

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2007年11月12日

『真相』 横山秀夫

横山秀夫の短編はすばらしいです。『第三の時効』以来
はまってしまいました。読み手を惹きつける導入部。
テンポのよい展開。意表をつくラスト。そして、そこに現れる
人間の心の醜さ、美しさ。松本清張を彷彿とさせます。

5作の短編が収録されています。表題作の『真相』は
息子を殺されてから10年たったある日、犯人が捕まった
との知らせが主人公の男のところに届きます。その犯人は
自供する中で、息子に関する意外な事実を語ります。
はたして「真相」は何なのか、最後まで息をつけません。

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2007年09月28日

『 チーム・バチスタの栄光』 海堂尊

とある出版社の方が「この小説はスターウォーズだ」と
おっしゃっていました。
読むといろいろなところに伏線めいた描写や、気になる
登場人物が出てくるのですが、読み終わっても「あれ
この登場人物、これからもっと出てくると思ったのに・・・」
と思うところしきり。
この『チーム・バチスタの栄光』は大学病院の万年講師、
田口を主人公とする3部作の第1作目なのですが、本作で
少ししか登場しない人物が、2作目や3作目で主役級の
活躍をします。つまり、2作目、3作目を読まないと読了感が
得られない仕組みになっています。
作者の海堂尊さんはこの作品がデビュー作なのですが、
しょっぱなから、これだけ広がった世界観を持つ小説を
書き上げるとは、この先の作品がとても楽しみです。

桐生助教授をリーダーとする、東城大学の心臓外科施術のスペシャリスト
チームは困難な左心室縮小手術を次々と成功させ、「チーム・バチスタ」
として世間の脚光を浴びます。しかし、そんな常勝集団の彼らが、突然
3例の手術を立て続けに失敗し、患者を死に至らしめてしまいます。
その原因を究明すべく、「愚痴外来」の万年講師、田口に院長から
調査命令が下されました。
果たして単なる医療事故なのか、それとも何らかの犯罪がからんでいる
のか?作品中盤から登場する厚生労働省の役人、白鳥が強烈なキャラで
いつまでも記憶に残る小説になっています。

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2007年09月12日

『QED六歌仙の暗号』 高田崇史

七福神に関する論文は一切禁止する

明邦大学文学部に流れた通達である。明邦大学で
七福神の謎にかかわったものが次々と不幸に遭った。
なぜ布袋や大黒、弁天といった出自の異なる神々が
「七福神」としてまつられるようになったのか。
そこには日本の歴史の知られざる「闇」が隠されていた。
シリーズ前作で百人一首の謎に挑んだ桑原崇が
七福神と六歌仙の符合を解いていく。

読んでいて「猿丸幻視行」を思い出しました。
高校の時読んで、最高級におもしろかった記憶があります。
あのころほど純真に感動はしませんでしたが、興味深い
知識もたくさん盛り込まれています。「清水の舞台から
飛び降りる」ってこういうことだったの?みたいな。

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2007年09月07日

『密命 見参!寒月霞斬り』 佐伯泰英

以前「居眠り磐音」を読みましたが、この「密命」シリーズのほうが
ハードボイルドで立合いシーンも迫力があります。佐伯泰英の
記念すべき時代小説第一作。

豊後の小藩、相良藩藩士の金杉惣三郎は、所蔵総数六万を超える
相良文庫の総目録と十冊の希覯本を伴って江戸に入った。しかし
それは藩の存亡がかかった、主君のある「密命」を帯びていた。

惣三郎は直心影流の剣の腕と持ち前の侠気で市井のトラブルを
解決し、江戸の人々の信望を集めていく。しかし、相良藩転覆を
たくらむ陰謀に、惣三郎のみならずその周辺の人々も、いやおうなく
巻き込まれていく。


最近17巻目が出版された長編シリーズです。たっぷり楽しめること
うけあいです。

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2007年08月12日

『モルヒネ』 安達千夏

その題名にひかれて買いました。
「モルヒネ」って背徳の香りがしますよね。

在宅医療のクリニックに勤める医師・真紀の前に、元恋人のピアニスト
克秀が突然現れます。彼は末期がんで余命3ヶ月の身。
真紀はすでに婚約者もいますが、自分と「同じ側」の人間の克秀に
心を動かされます。

残念ながら、登場人物たちの境遇が不幸すぎて、どうにも感情移入
できませんでした。また克秀が勝手なヤツで・・・。女性はこういう
屈折した男性に魅かれるんでしょうか。

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2007年07月29日

金瓶梅 上

子供のころ岩波少年文庫で「三国志」「西遊記」「水滸伝」を読み、
中国四大奇書のうちのもうひとつである「金瓶梅」も読みたいと
思ったのですが、岩波少年文庫には入っておらず、なぜだろうと
思ったものでした。

もちろん、少年に読ませられる内容ではありません。

ウチのお店で平台で展開されていたのでつい買ってしまったの
ですが、ふと正気に返って、これを電車の中で読むのはちょっと
恥ずかしいなぁ。どうしようととまどっていたところ、親切にもきわどい
描写の箇所には上部に線がひいてあるので、まあ人の読んでいる
本をそんなにじろじろ見る人もいないだろうと、線がひいてあるところを
飛ばしながら読みました。

つまらない人間なのにけっこうお金に余裕がある西門慶が、
潘金連をはじめ、何人もの女たちと繰り広げる愛憎の物語。
気づかされたのは、当時の中国は結構女性が強いということ。
婿をとったり、経済的に自立した女性もいれば、離婚再婚も
自由です。まあ、全部の女性がその権利を有しているわけでは
ありませんが。

さて主人公の西門慶は苗字が「西門」ですが、「花より男子」に
出てくるちょっとプレイボーイ役のF4のメンバーの苗字も「西門」
でした。偶然の一致としてはおもしろいです。

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2007年07月07日

『第三の時効』 横山秀夫

とにかく読んでいただきたい一冊です。これまでの警察ものとまったく
ちがった構成の緻密さ、刑事たちのキャラクターの強さ、スピード感、
どれをとっても傑作です。読んでいて、これだけ続きが気になる小説も
久しぶりです。いつも電車に乗りながら本を読んでいるのですが、
「え、こんな中途半端なところなのに、もう降りなきゃならないの?」
と何度も思いました。

短編集なのですが、舞台や登場人物も共通していて、話も多少つながった
ところがあって「この刑事がこんなにいやなヤツなのは、過去にこんな事件が
あったからなのか」と納得できるようになってます。
ただ、登場人物が男性ばかりなので、女性の方には共感できないところも
あるかもしれません。
それでも、読んでいただきたい1冊です。

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2007年06月10日

『カシオペアの丘で』重松清

北海道にある、かつて炭鉱で栄えた町、北都。そこに
トシ、シュン、ミッチョ、ユウの、4人の幼馴染がいた。
小学生四年生までは仲のよい4人だったが、運命の
糸は彼らをそれぞれ違った道へ導いていく。町を去って
札幌に行く者。東京に行く者。また、町に残るしか選択
肢のなかった者。
しかし、30代も終わりにさしかかって、ふたたび彼らは
北都の町を舞台にめぐり合う。それぞれの過去をかかえ
ながら。

「流星ワゴン」と同様、この物語にも父と子が出てきます。
自分に子供ができてから、この手の話にはめっきり弱く
なりました。

だれかを傷つけてしまった過去は取り消すことはできない。
しかし、人は必ず過ちを犯すものであり、その過ちを必死で
ゆるしてもらおうとする姿こそ、人間らしいのだと教えられました。

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2007年05月12日

『となり町戦争』 三崎亜記

国家が戦争に向かって突き進む時、私たちははたして
反対することができるのだろうか?
太平洋戦争時の我々の祖先や、今も戦争を起こしている
国の人々はおそらく、戦争に賛成するとか、反対するとか、
選択する感覚すら持ち得なかったのではないか?

主人公の住む平凡な町は、ある日突然となりの町との
戦争を宣言します。戦争にもかかわらず、町は普段と変
わらぬ平穏さを保っていますが、市報の戦死者数は
着実に増えていきます。そして主人公のところにも、
いかにもお役所然とした「戦時特別偵察業務従事者」の
任命書が届きます。

かつてホッブズは国家をリヴァイアサンという怪物に
例えました。今の日本のように平和な時においても、国家は
戦争の時と変わらず、平気で人の自由を束縛し、その命を奪う
凶暴性を持ち合わせていることも感じさせられます。

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2007年04月28日

『流星ワゴン』 重松清

父と子はいつからわかりあえなくなってしまうのだろうか。

失業し、家庭も崩壊して、「もう死んでもいいや」と思っている主人公の
前に一台のワゴンが停まる。そこに乗っていたのは自動車事故で5年前に
なくなった父親と子供だった。「あなたのたいせつな場所につれていって
あげます」と誘われるままにワゴンに乗り、家庭が崩壊する分かれ道となった
過去の場面へと連れて行かれるが、このままではまずいとわかっていながら、
何もすることができない。

だれしも、子供のころは無条件に父親が好きだったのに、思春期になると
たいてい父親とは反発するか、疎遠になるのではないでしょうか。
作者自身「父親になったからこの作品が書けた」とコメントしていますが、
父であり、子である人は誰しも身につまされるところが多い小説だと
思います。

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2007年04月10日

『再生巨流』 楡周平

大手運輸会社勤務の主人公が突然新規事業担当部長に任じられた。
しかし、それは態のいい左遷通告に過ぎなかった。与えられた期限である
1年間のうちに、4億円の年商規模の新規事業を立ち上げることを命ぜられる
主人公。はたして彼はこの難題をどう切り抜けるのか。
小説にもかかわらず、かなりリアルな事業計画で読み応え十分です。
事業を営む身からするとけっこう考えさせられる部分も多く、息抜きには
なりませんでした。ふー。

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2007年02月18日

『ひとり日和』青山七恵

芥川賞選考委員の石原慎太郎さんと村上龍さんが絶賛したと
いう今回の受賞作です。読んでみましたが、すばらしい!!
文章自体は余分な力をいれずにごく自然に読み流せるのですが、
時計で刻んだように話が精緻に構成されていて、読んでいて心地
よさを感じます。
20歳の知寿さんが71歳の吟子さんのところに居候をして、春から
冬までの一年間を過ごす中でのさまざまな出来事を描いています。
知寿さんと吟子さん、二人で一緒に暮らしているのに、時間の流れ方
がまったく違うのには思わず微笑んでしまいます。
ひとり日和」という表題と、ストーリーと、登場人物と、物語の舞台と、
本に付いているピンクのひものしおりまで、すべてがとても調和が取れて
いて、完成度が高いな、と感じさせられました。

そういう本は最近はあまりないですが、この本はどの世代の人にも
「これは面白いよ」とすすめられます。

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2007年02月14日

『野分ノ灘 居眠り磐音江戸双紙』 佐伯泰英

時代劇につきもののオヤジっぽいエロ描写がまったくありません。
全編にさわやかな空気が流れています。藩主が一介の浪士と談笑
したり、男女の会話もなんとなく対等。身分制や男尊女卑の暗い
影が薄く、ともすると時代考証に疑問を感じるほど現代的です。

九州の小藩の家老の家に生まれた主人公磐音が、守旧派を破り
藩政改革を達成するも、自ら犠牲になって藩を離れ、江戸で町人の
ような暮らしに身をやつす、と波乱万丈な物語。20弾目をいきなり
読んだ形になりましたが、自然に話に入り込めました。

すすめてくれた双葉社の担当者さん、ありがとう。

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2007年01月23日

『ローマ人の物語 ユリウス・カエサル』 塩野七生

塩野さんは無類のカエサル好きだそうで、「ローマ人の物語」の中で
一番のおすすめは、このユリウス・カエサルのルビコン以前、ルビコン以後
だ、と聞いたので、そのとおりに読んでみました。本当に一番のおすすめか
どうかは、まだ他の巻を読んでいないので論評する段にありませんが、
このユリウス・カエサルは間違いなく秀作です。

カエサルというと武人のイメージでしたが、若いころはむしろ弾圧され、権力に
上り詰めるまでには政治力を駆使する必要があったこと、当時のローマが
すでに非常に整備された法治国家であったことなど、この本を読んで初めて
知りました。
学生のころにローマの歴史を勉強した時は、非常にわかりずらい印象がありました。
日本の場合は足利家が滅びれば室町幕府はおしまい、中国の王朝も血統が
滅びれば王朝も滅亡とわかりやすかったのですが、ローマの場合は皇帝の血統
がとだえても、帝政は続いていきます。
それも、共和制のローマの時代から脈々と続いた、法による支配があるからだ、
と始めてわかりました。

塩野さんはこの15年間、「ローマ人の物語」を書くために他の全ての仕事を犠牲にし、
英語やイタリア語の文献はもちろん、キケロやカエサル自身が残したラテン語の資料
まで読みとおしたそうです。それに塩野さんの深い人間心理の洞察が加わったこの
「ローマ人の物語」は日本が世界に誇れるローマ史研究の集大成といえるのでは
ないでしょうか。これからひとつひとつ読んでいくのが楽しみです。

そうそう、ガリア戦記のところで「アステリクス」が登場したのが個人的には最高に
うれしかったです。アステリクスはフランスでとても人気のあるマンガですが、
主人公はカエサルに抵抗するガリア人たちで、ちょっとドタバタっぽいないようです。
何シリーズも出版されていて、中にはセリフが全てラテン語で書かれたバージョン
まであります。なぜこの話がこんなにフランス人の間で人気があるのかずっと不思議
だったのですが、塩野さんの解説を読んで理解できました。
アステリクスの英語の紹介サイトはこちら

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2006年12月20日

『白夜』 ドストエフスキー

たまには文豪の作品でも読もうかな〜と思ったけれども、
大作を読破する度胸がないので、この白夜を読みました。
わずか100ページあまり。これなら読めます。

孤独な青年が少女に出会って身の上話を聞くうちに、
だんだんお互いに好意を持ち・・・という話ですが、
ふたりともセリフのまどろっこしいことこの上ないです。
今の時代ありえない恋愛ものではあります。が、
恋に落ちた者の逡巡、夢想、情熱がみずみずしく
描かれているのはさすがです。「罪と罰」の重い
苦しいイメージとは違った、ドストエフスキーの魅力が
楽しめます。


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2006年12月16日

『重力ピエロ』 伊坂幸太郎

記憶力が必要な小説です。ミステリには伏線が
つきものですが、この小説の伏線の多さはハンパじゃありません。

伊坂ワールド、と呼ぶにふさわしい独特の世界が広がっています。
いたずら心に富んだ会話がちりばめられ、登場人物も秘密ありげ
語り手である主人公ですら、信じてはいけません。

主人公・泉水の家族は父と亡くなった母に弟の春の4人。春の出生には、
ある「事件」が関わっています。そんな主人公の周辺で連続放火事件
発生します。放火現場には謎のグラフィティアート、すなわち落書きが
残されています。果たして、その落書きが意味するものとは・・・。

緻密に組み立てられた構成と独創的な設定。
ファンが急増中なのもうなずけます。

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2006年12月10日

『剣客商売 1』池波正太郎

池波正太郎、初めて読みましたがやはり面白いです。
すでに隠居したかつての剣豪秋山小兵衛とその息子
大治郎がいろいろ事件を解決していく物語。
またこの小兵衛が二十歳にもならない下女の娘を
妻にしてしまって、いちゃいちゃしまくる、いいキャラクター
です。一方息子の大治郎は真面目一徹。女性とは
まったく縁がありません。
食べ物の描写が緻密なのもちまたの評判どおり。
読むとねぎの味噌汁が飲みたくなります。

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2006年11月26日

『人のセックスを笑うな』山崎ナオコーラ

読み始めは主人公に共感できず、つまらないなぁ早く読み終わらないかなぁ
と思っていたのですが、中盤からふたりの恋愛の行方が気になり、急に
引き込まれていきました
。不思議な小説です。
19歳の主人公が20歳年上の女性とおつきあいするお話。主人公の名前は
『磯貝みるめ』、相手役の女性はどう贔屓目に見ても魅力の乏しい40手前の
女。これほど違和感のある設定なのに、なんで後半になって面白いと思えて
きたんでしょうか。うーん。
映画化も決定したそうです。これは難しいな。
ただのロマンポルノにならなきゃいいが。

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2006年11月04日

『照柿』 上・下 高村薫

福生、羽村、拝島など、私にとって見慣れた地名が続々出てくるので
買ってみました。前から高村薫さんは気になる作家だったのですが、
作品を読むのは今回が初めてです。
羽村の部品工場や加美平団地の描写は、地元の人間から見ても非常に
リアルで、ウチの本屋が出てこないのが残念なくらいです。(不純な感想で
すみません)

ストーリーは読み応えがあります。二人の男を中心に話が展開して
いきますが、あまり重要とは思えない事件を執拗に追及する刑事と、
本当に愛しているのかわからない女に固執する妻子もちの男。
二人は、理性を持つものならば選ばない道を選択し、人生の暗がり
へと落ちていきます。文中に繰り広げられるさまざまな伏線が
次々とつながりあっていく様に興奮させられます。

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2006年10月26日

『夢を与える』 綿矢りさ (文藝 2006冬号)

あの綿矢りさが沈黙を破って書いた新作小説、と紹介すれば
手に取る理由としては十分ではないでしょうか。
今発売中の「文藝」に彼女の新作「夢を与える」が掲載されて
います。単行本になるのを待ちきれず、読んでしまいました。

子役として小さいころから注目される女の子がタレントとして
ブレイクする中である事件に巻き込まれます。登場人物それ
ぞれが主人公としての輝きを持ちながら、マスコミやインター
ネットが絶大な権力を持つ現在社会に翻弄されていきます。
マスコミの描写が非常にリアルなのは、文壇アイドルとなって
しまった著者の経験のなせるわざでしょうか。

前作でも話題をよんだ性描写は、今回もきまじめに出てきます。
作家の表現力が秀逸なので目のやり場に困ります。

この作品の続編も含め、これからの作品が楽しみな作家です。

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2006年10月22日

『パパとムスメの7日間』 五十嵐貴久

けっこう笑えます。電車の中で読んでいてもついつい笑ってしまい、
周りから変な人と思われたかも知れません。
心と体が入れ替わるハナシは映画「転校生」などいろいろあります
が、イマドキの父親と娘が入れ替わると、ここまで言語もカルチャーも
違うかと、改めて思い知らされます。入れ替え期間は7日間と短め
ですが、これ以上長いとお互いの世界に耐えられないのかも。
ダイエットを気にしていたムスメがパパの体に入れ替わったとたん、食欲の
おもむくままに食べ始めたり、細かいところまでリアルに描写されて
いるので、あー確かにこうなるかもな、と新鮮な感じがしました。
女子高生ってみんな携帯メールは両手で打つんですか?わたしも
オジサンかなぁ。

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2006年10月17日

『日本以外全部沈没』筒井康隆

いわずと知れた小松左京「日本沈没」のパロディです。
日本以外のすべての国が海に沈んでしまい、アメリカ
大統領やハリウッド俳優がこぞって日本に難民に来る
話です。
ところで、「日本以外全部沈没」の映画を見ました。
渋谷でレイトショーしかやっていない、超B級物です。
実相寺昭雄監修、河崎実監督と聞いたらだまって
いられません。期待にたがわぬB級ぶりで、思わずAttack of the killer tomatoes
を彷彿としました。
主役には小橋賢児、柏原収史となかなかの人選。
将来有望な若手俳優がこんな映画に出て大丈夫
なのか、とかえって心配になります。
映画は今の時流に合わせて多少アレンジされて
います。主人公を夫婦にして話を広げたのは秀逸
です。とりわけ柏原収史夫妻の平和ボケぶりは
必見です。
北朝鮮の核実験でゆれる昨今、上映禁止に
なりかねないので、ぜひ早めに見に行ってください。
といっても興味のない人やB級映画が嫌いな人は
行かないことをお勧めします。

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2006年09月19日

『グロテスク』 上・下 桐野夏生

発表からすでに4年、「東電OL殺人事件」をモチーフにした小説
ということでご存知の方は多いでしょう。現実の事件の枠にとら
われることなく、作者の独自の発想で、現代社会の平和で豊かな
表層に隠された暴力と貧しさをとらえた作品となっています。
女性はもちろん男性も、主人公たちの経験する軋轢や孤独に
共感する部分を持つのではないでしょうか。
1970年代、80年代に少年期を過ごしたものとしては、ここに
繰り広げられるグロテスクな世界はとてつもなくリアルです。

何より恐ろしいのはQ学園の女子学生たちが構成する、陰湿な
階級社会です。これを読んだら、あなたも自分の娘をQ学園に
入学させようとは思わないはず。
失礼しました。Q学園なんて実在しないですよね。違いますか。