著者は詩人ですが、エッセイなので特に詩に造詣の
ない私のようなものにも楽しく読める本です。
普通の人が読まないような本についての寸評も語られ、
氏のなみなみならぬ読書量をうかがわせます。
「コゼットは小雪」の章では外国の作品が訳によって
いかに趣を変えるかについて述べられていて、例として
『レ・ミゼラブル』が出てきます。明治36年の黒岩涙香
訳の『噫無情』ではジャン・バルジャンは戎瓦戎(ぢゃん
・ばるぢゃん)、コゼットは小雪となります。セリフの言い
回しもかくのごとく名調子です。
『シテお前の名は何と云ふ』此様にせられても小雪は
更に恐れを感ぜぬ『ハイ私の名は小雪』『エ、エ、エ、
小雪』と老人は叫んだ、・・・
もうそのまま歌舞伎の舞台にしてほしいくらいです。
私はこれまで"Les miserables" という題を「あヽ無情」と翻訳
したのは、語学の知識の乏しい明治時代の日本人の誤訳だ
と教わりましたが、とんでもない。実は言葉を超越した意訳で
あることがよくわかりました。
別の章ではイタリアの作家ブッツァーティが紹介されています。
おもしろそうなので今度読んでみようと思います。
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