黒神話:悟空の魅力

今年8月20日に中国のゲーム会社游戏科学(ヨウシー カーシュエ)が発売したゲーム、「黒神話:悟空」が、世界中で人気を集めています。発売から3日で1000万ダウンロードを記録し、すでに数千万件に達していると思われます。音声は中国語と英語ですが、日本語と韓国語の字幕もついてます。

ゲームの内容は、西遊記の主人公:孫悟空の末裔「天命人」が、祖先である孫悟空の持っていた能力を取り戻すために、6つの法器を集めるといったもので、プレイヤーは孫悟空の末裔となって、敵と戦います。登場する敵が西遊記に出てくる妖怪、黒風怪や黄風大王、虎先鋒などを忠実に再現しているため、中華系ゲーマーの圧倒的人気を集めています。戦闘する場所も、中国の名所旧跡を完璧に再現しています。

古代の中国をイメージしたファンタジーな世界観と、映像の圧倒的美しさが魅力です。強いボスキャラとばかり戦う設定で難易度は高めですが、迫力のある戦闘シーンには誰もが息をのむでしょう。主人公の技も、分身の術や定身術(相手の動きを止める術)、耳から如意棒を出すところなど、原作の西遊記を忠実に再現しています。

日本では、1970年代の堺正章主演のドラマ「西遊記」をはじめ、ドラマやコミックでの翻案が多く、もともとの西遊記のストーリーに触れることは少ないかも知れません。孫悟空のイメージも、マンガ「DRAGON BALL」の主人公を思い浮かべる人が多いでしょう。中国の映画やドラマに出てくる孫悟空は、見た目は完全にサルそのもので、ストーリーも比較的原作をそのままなぞっています。逆にこの「黒神話:悟空」をプレイすることで、原作の西遊記に興味を持つ日本人が増えるようになるかも知れません。

中国の企業が制作するゲームのレベルは非常に高く、このようなゲームがこれからどんどん出てくると予想されます。政府が表現を規制するためにコンテンツ産業の力が弱いと思われる中国ですが、逆に政府の批判さえしなければ、けっこう自由に創作できるのが実態です。中国発のゲームが世界を席巻する日も遠くないかも知れません。