アリババ制裁の裏の目的

中国政府が中国の大手IT企業への締め付けを強めていることが日本でも連日ニュースになっていますが、その中でも特に有名で、影響も大きいのが、アリババ(阿里巴巴)への制裁です。2020年11月にアリババグループの金融部門であるアント・フィナンシャルは上海と香港市場への上場を予定していましたが、中国政府当局により中止を余儀なくされました。その後創業者のジャック・マー (马云 マーユン) は行方をくらまし、アリババは独禁法違反のかどで2021年4月には180億元(約3010億円)の制裁金を科せられました。これはアリババが中国当局の管理の及ばない領域にまで事業を拡大したからと言われますが、もう一つ、裏の目的があると言われています。

アリババは浙江省杭州市に本社を構えます。杭州(杭州 ハンジョウ)は南宋時代に都となり、西湖(西湖 シーフー)という美しい湖に面した歴史のある街ですが、その杭州市のトップだったのが、杭州市共産党書記の周江勇(ジョウ ジアンヨン)でした。中国は市長よりも共産党のトップである党委員会書記の方が権力。周江勇とジャック・マーは親密な関係で、周はジャック・マーを功績のある杭州人として表彰したこともあります。一説によると習近平はアント・フィナンシャルの株の購入申し込み者のリストに周江勇の名前が載っているのを見て、上場中止を指示した、と言われています。

アント・フィナンシャルの株を取得して巨万の富を手に入れたら、周江勇の影響力が強くなって、いずれ自分の政敵となるかも知れないと恐れて、つぶしにかかった、とも考えられますが、真偽のほどは定かではありません。有力者の失脚と言えば薄熙来(ボーシーライ)が記憶に新しいですが、習近平の国家主席3期目に向けて、権力闘争が始まっているという見方もあります。ナンバー2の李克强(リーカーチャン)や腹心と言われた王岐山 (ワンチーシャン)が果たして来年以降も常務委員に残れるのか、注目されるところです。