中国のコーヒー価格戦争

中国に8339店舗展開し、中国最大のコーヒーチェーンの座を確保しているラッキンコーヒー(瑞幸咖啡 ルイシン カーフェイ)の前途に暗雲が立て込めています。中国のコーヒーの価格は、スターバックスが30元(約600円)、ラッキンコーヒーが15元(約300円)ですが、いま5元(約100円)でコーヒーを売るチェーン店が、台頭しているのです。

主なところでは中国のタピオカ飲料大手の蜜雪冰城が運営する幸运咖(シンユン カー)、 ラッキンコーヒーの創業者である女性、钱治亚が2022年に創立した库迪咖啡(クーディー カーフェイ)、日本の原宿にも出店していた(今は閉店)虎闻咖啡(フーウェン カーフェイ)、主に上海に展開している三立方咖啡(サンリーファン カーフェイ)、成都や重慶に展開している爵渴咖啡(ジュエカー カーフェイ)など、まさに戦国時代を思わせるような群雄割拠の状態です。それぞれロゴや店舗デザインもスマートに作り上げ、中国国産の雲南地方のコーヒー豆に力を入れたり、さまざまな特色を打ち出しています。

背景には、中国のコーヒー文化がまだまだ成長しており、これまで上海や北京が中心だった市場が、一线城市といわれる成都や重慶など地方の大都市に拡大し、さらに四线城市、五线城市と言われる田舎の小都市にも広がっていることがあげられます。5元という低価格になることによって、これまでコーヒーを飲んでいなかった人々にも、コーヒーを飲む習慣が生まれていることも、市場の拡大を促進している要因だと思われます。

しかし、5元でコーヒーを売って、利益が出るのかという疑問もあります。ゴールドマンサックスの調査では、スターバックスのコーヒーの原価(人件費や家賃も含んだ試算)は22.17元、ラッキンコーヒーの場合でも15.85元という結果が出ています。ラッキンコーヒーの場合は現状でもかなり薄利多売で、トッピングやサイズアップして単価を上げても、1杯1元の利益がでるかどうか、だと思われます。5元で売ったら、とても元が取れません。独禁法のない中国では、競合が倒れるまで価格競争を続け、独占状態になったら価格を引き上げる例がよく見られますが、コーヒー市場も、これから生きるか死ぬかの競争時代に突入するように思われます。