スターバックスの大胆な賭け

中国のスターバックスは猛烈な出店攻勢をかけます。正式に発表された2025年中国戦略ビジョンによると、この3年間で3000店舗を出店し、2025年には9000店舗にする計画です。従業員も6万人から9.5万人に増員します。平均で9時間ごとに1店舗、スターバックスの新しい店舗ができる計算になります。

スターバックスが、この大胆な賭けに出た背景には、創業者で伝説の人物であるシュルツが、役員会で中国市場の重要性を何度も言及し、「中国はスターバックスの未来だ」とまで言ったからだと言われます。中国は95后、00后と呼ばれる新しい世代(1995年以降生まれ、2000年以降生まれの世代)がこれから社会人になり、ビジネスシーンのコーヒーの需要を牽引すると思われます。

しかし、足元の状況を見ると、中国のスターバックスは大きな危機にあります。2022年第3四半期(2022年4月~6月)は売上が前年同期から40%下落し、新型コロナウイルスによるロックダウンの影響はかなり深刻です。また、中国市場にはさまざまなスターバックスの競合が存在します。こちらで以前紹介したラッキンコーヒーをはじめ、Mannerや Seesawなど、新しいコンセプトのチェーンが登場していますし、喜茶(シーチャー)や奈雪(ナイシュエ)のような茶系飲料のチェーンもコーヒーの市場を蚕食しています。

ただ個人的にはスターバックスは中国市場でも大きな成功を収めるのではないかと思っています。スターバックスは日本では圧倒的なブランドの強さを誇っていますが、その理由は「場所をプロデュースする力」にあるのではと思います。中国の競合相手を見ても、スターバックスのような「場所をプロデュースする力」を持っているところは、まだ見当たりません。もちろん、これからそういう競合も出てくるかも知れませんが、中国が新たな消費文化に進化する中で、スターバックスは優位性を発揮していくのではないかと思います。