三国志とSDGs

イーロン・マスクの最近のツイートが中華圏で物議をかもしています。

突然、"Humankind"と書いた後に次のような漢詩をツイートしたためです。

煮豆燃豆萁

豆在釜中泣

本是同根生

相煎何太急

三国志に詳しい方ならご存じの「七歩詩」という漢詩です。魏の国を興した曹操には数多くの子供がいましたが、中でも曹植(そうち)という息子が特に優秀で、かわいがっていました。しかし曹操の死後、魏の皇帝には兄の曹丕(そうひ)が即位し、曹植は迫害を受けるようになります。ある時、兄の曹丕から「七歩歩くうちに詩を作らなければ処刑する」と言われて詠んだのが、この詩だと言われています。

日本語では「豆を煮るに豆がらをたく」と読み下されますが、豆を煮るときに豆がらをたいて火をおこしている様子をうたった詩で、もともと同じ根から生まれているのに、なぜ豆がらはそんなに激しく豆を煮るのか、と、自分を豆、兄を豆がらに例えて兄弟で争うことを非難した詩だと伝えられています。

なぜイーロン・マスクがこの詩をツイートしたのかその理由は明らかではありません。おりしもCOP26が開かれ、地球温暖化の現実的な解決策が示されなかったことに対し、先進国が経済優先の政策を進めることで、貧しい国の人々が苦しめられていることを批判したのではないか、と言われています。そうだとすると 「豆を煮るに豆がらをたく」 という詩が、持続可能な発展の象徴として、もともとの意味と違った解釈で広まるかも知れません。

ただ、このツイートにはさまざまな解釈があって、中国と台湾の対立の激化を懸念したものであるとか、ただhumankindというゲームの感想をつぶやいただけだという説もあります。いずれにしても、世界一の金持ちになったと話題のイーロン・マスクが漢詩をつぶやくというのは中国語学習者としては興味深い出来事です。