中東で戦う中国企業

いま開催中の2022ワールドカップカタール大会ですが、日本代表はドイツやスペインといった強豪国を立て続けに破り、日本中を大いに沸かせています。一方中国はまだまだサッカーが弱く、今回も本戦に参加できていませんが、ワールドカップの中継を見ていると、中国企業の広告が目立ちます。中国チームは参加していなくても、中国企業はワールドカップのメインプレーヤーになっている、というところでしょうか。

今回のカタール大会は初の中東開催ですが、多くの中国EC企業が中東の市場に進出しようとチャレンジしています。中東の国々はオイルマネーで裕福な国民が多く、市場はまさに宝の鉱脈ですが、さまざまな文化的な違いから、まだ成功している企業は少ないようです。2012年にはJollyChicという中国のEC企業が中東に進出していますが、成功していません。SHEINやFordeal、AJmallと言った企業が中東に進出していて、一山当てようとしのぎを削っています。

しかし、中東の文化的な違いは、予想以上に大きな壁となって立ちはだかっているようです。まず、中東は現金決済が主流で、クレジットカードが普及していません。Fordealの物流責任者が語るところによると、通常は発注を受けた取引の成約率は98%に上りますが、中東では80%程度しかなく、小さいEC業者では50~60%にしかならないところもあるそうです。

中東の人は商品を買う時にいくつかのサイトから同時に注文をして、一番早く届いたところから購入して、他はキャンセルする習慣があるそうです。クレジット決済ではないので、キャンセルされたところは売上が立たず、丸々損になってしまいます。他にも中東は住所が整理されていない都市が多く、サウジアラビアの首都のリヤドでは、重複する地名があったり、同じ場所に二つの番地がふられていたりしていて、住所だけで宅配がすることが困難で、多くの顧客が「〇〇モスクの近く」とか「△△レストランの向い」などと住所を表記しているそうです。

また、Fordealの物流責任者は、通販の利用の仕方についてユーザーを教育する必要があると指摘します。例えば「リヤドの近くの町に住んでいる」と言っていた顧客が、実際にはリヤドから100キロ離れた住所だったり、車に乗りながら商品を注文した顧客の場合は、登録された住所が高速道路の上だったりするケースがあったり、通販の仕組みをユーザーがそもそも理解していないところもあるようです。

それでも中東の市場は魅力的なことには変わりがなく、多くの企業が挑戦を続けています。ただ、ゲームの市場では腾讯などすでに大きな成功を収めていますが、ECの分野では、まだまだ壁は厚いようです。こうした文化的な違いを乗り越えて、近い将来、中東市場で成功を収めるEC企業が出てくるかも知れません。