奴性と血性

中国で何かと話題を振りまいている王思聪(ワンスーツォン)という人物がいます。ショッピングセンターやマンションの開発を幅広く手掛ける万达集团(ワンダー ジートゥアン)という中国トップ企業の社長の御曹司で、これまでも派手な誕生日パーティーを開いてはSNSで流したり、お金持ちのボンボン丸出しの発言をして、国民の花婿(国民老公 グオミンラオゴン)と呼ばれ中国では非常に有名な人物です。

「誰かと友達になるとき、相手がどれだけお金を持っているかは気にしない。どのみちオレより金を持っている奴はいないんだ」などと発言したり、自動車の所有台数も、「数えたことがないからわからない」と言ってみたり、人の神経を逆なでする発言を繰り返していますが、そのあっけらかんとした態度に、なぜか人気のある人物です。国民老公(グオミンラオゴン)という愛称にも、それが表れています。

そんな彼が上海のコロナ対策を批判して、微博(ウェイボー 中国版Twitter)のアカウントを削除されました。フォロワーが4000万人いたというので、驚きです。そのアカウント削除の原因になった問題の発言の原文を紹介すると

每天早上的核算检测,检测的不是阳性或阴性,而是你的奴性和血性,今天开始不会开出门做核算了。

「毎朝のPCR検査は、陽性か陰性かを測定するのではなく、お前の奴隷根性と気骨を測定しているのだ。今日からPCR検査をしに行くのはやめた」、というような意味です。PCR検査は中国語で核酸检测(ハースアン ジエンツァー)ですが、「核酸」と書くべきところを「核算」と漢字を間違えています。前回紹介した「四月之声」のように、政府はコロナ政策に対する批判の声を消すのにやっきになっていますので、この発言は完全にアウトです。ただ、彼の発言は国民の気持ちを代弁しているのは間違いなく、彼の発した「奴性和血性」という言葉も、今年の流行語になりそうな予感がします。