日本人の知らない日本語「小確幸」

このブログを読まれている方は、「小確幸」という言葉をご存じでしょうか?

私は中国人の友人に教えてもらうまで知りませんでした。村上春樹さんのエッセイ「村上朝日堂」の中に出てくる言葉で、「小さいけれど確かな幸せ」という意味です。例としては、激しい運動をした後に、キリッと冷えたビールを飲むこと、だったり、誰にでもある、日常の些細でちょっと幸せに感じられることです。

日本では村上春樹のファンの方以外にはあまり知られていない言葉だと思いますが、中国ではよく使われる言葉だそうです。もともと7,8年くらい前に台湾で流行語になって、その後中国にも広まったようです。ネットで調べてみると、韓国でも流行語になっているそうです。村上春樹さんは中国でもとても人気のある作家で、中国で本屋に行けば必ず平積みされています。

日本で流行っていないのになぜ他の国や地域で流行っているのか考えると、その言葉の響きにあるように思います。「小確幸(しょうかっこう)」という響きは「小学校(しょうがっこう)」を思い出させて、新しい言葉として頭に入ってきづらく感じます。中国語でもこの二つの言葉は同じ漢字を書きますが、「小确幸(シャオチュエシン)」「小学校(シャオシュエシャオ)」と発音はまったく違ってきます。

「小確幸」という言葉が、閉塞感や不透明感を感じている台湾や中国の人々の気持ちに刺さったわけですが、日本を飛び越えて中華圏で流行する言葉を作り出してしまうところに、村上春樹さんの感性の奇抜さを感じます。もし彼が「しょうかっこう?ちょっと響きが悪いからほかの言葉にしよう」と思っていたら、この言葉は生まれなかったわけですから。