拼多多(ビンドゥオドゥオ)への反抗

拼多多(ビンドゥオドゥオ)という中国の通販大手企業があります。ユーザーは6億人、年間売上は10兆円に上ると思われます。創業から5年くらいで急成長しましたが、より多くの人が集まって買えば、さらに安くなる共同購買がその成功の理由と言われ、日本では中国版グルーポンと紹介されることが多いです。

なぜ拼多多がここまで成功できたのでしょうか。グルーポンといえば日本ではすでに事業を終了しており、とても成功したとは言えません。おせち騒動があってブランドイメージが悪化したことが原因のひとつではありますが、ネットを活用した共同購買というビジネスモデルで、日本で大成功している企業はないと思います。拼多多の利用者は、北京や上海などの大都会ではなく、農村部や田舎の都市に多いという特徴があります。いくら安いと言っても、相手の人がその商品を欲しいと思わないと、いくら友達や親兄弟と言っても、商品を勧めづらいと思います。日本では親しい人と言っても好みが多様化していて勧めづらいですが、まだ経済成長の途上にある中国の田舎では、まだ同じものをみんなが欲しがるという傾向があって、それが拼多多の成功の背景になっていると思います。他の人に取り残されたくない(害怕比别人差)という焦り(焦虑)が、中国人の間に広まっているようです。

もう一つ、拼多多が中国の人々の指示を得た理由に、仅退款(ジン トゥエクァン)というサービスがあります。日本の通販サービスの場合、商品が気に入らなかったら返品してお金を返してもらうことはできますが、仅退款は商品を返さなくても返金してもらえるサービスです。もともと中国の通販は販売業者の質が悪く、例えば果物を買ったら、20個のうち15個が腐っていた、ということも珍しくありませんでした。拼多多はユーザーを保護するために、購入者が不満だったら、返品しなくてもお金が返ってくる仕組みを作ったのです。

消費者にとってはよいサービスと言えますが、販売業者にとってはきつい仕組みです。当然、商品に不満がなくても仅退款を使う、悪い利用者も現れてきます。こうした人たちは羊毛党(ヤンマオタン)と呼ばれます。なぜ羊毛?と思われると思いますが、また別の機会に解説します。返金のコストは拼多多は負担せず、すべて業者が負担するので、拼多多で販売している業者の間に不満がたまってきました。

そしてついに怒りがたまった販売業者たちは、拼多多が直営しているショップで購入した後わざと仅退款を使ったり、カスタマーセンターに拼多多をののしる電話をかけたり、拼多多への嫌がらせを始めました。ネットでは拼多多は「ソマリアの海賊(索马里)」呼ばわりされ、情報を提供して扇動するものも現れた結果、嫌がらせの数が相当に上ったらしく、拼多多の直営ショップが閉店する事態にまでなりました。

インターネット通販はプラットフォームの力が強いので、条件を一方的に変更されて販売業者が泣いているという話は日本でもよく聞きますが、日本の業者の方がこのような「反抗」をしたという話は聞きません。このようなことをしても拼多多が方針を変えるわけではないでしょうが、感情的にやらずにはいられないのでしょう。中国の人々のワイルドさを感じます。