バラエティ番組が残した「真香」という言葉

最近は政府の規制でおとなしくなってしまいましたが、少し前の中国のテレビ番組には、攻めすぎていて倫理的にどうか、というものもありました。

变形记(ビェンシンジー カフカの『変身』からタイトルを取った)というバラエティ番組があったのですが、田舎の子供と都会の子供を交換して、違った家庭を体験させるという番組でした。番組を面白くするために、お金持ちでぜいたくに慣れた都会の子を、わざわざ山奥の貧乏な田舎の村を選んで、送り込むようなことをしていました。高層ビルが立ち並ぶ都会の子供が、ガスも通っていないような田舎に来て呆然とする様子は、中国の地域格差をよく表していて興味深いですが、素人の子供がテレビで有名になってしまって将来に影響しないのか、田舎への差別を助長しないか、不安になるような内容でした。案の定中国でも批判が多かったらしく、今はもうその番組はありません。

その番組で有名な話が、王境泽という少年が農村に行って、最初は、「ここの飯は外で飢え死にしたって、一口も食べない」「そこのがけから飛び降りたって食べない」とすごい剣幕で怒っていたのが、おなかがすいてその家のおばあさんが作ったご飯を一口食べて「真香啊」(とてもおいしい)と言って、ニコニコ笑いながら食べ続けたのです。

それから「真香(チェンシャン)」は、もともとの「おいしい」という意味だけじゃなくて、「これまで拒絶していたのに、やってみたら大好きになったこと」を意味するようになりました。もし中国語のネット記事の中に「真香」という単語が出てきて、よく意味が通じないなと思ったら、このエピソードを思い出してください。