中国版ネットフリックスの苦境

中国版ネットフリックスと言える爱奇艺(アイチーイー)が苦境に立たされています。今月になって社員を大幅にリストラした上に、VIP会員費の値上げに踏み切りました。

11月に発表された第3四半期の財務報告では営業収入は76億元と前年同期比で6%上昇したものの、経常損失は17億元と41%も赤字が拡大しました。株価も下落を続けています。

2018年にアイドル養成番組「偶像练习生」(オウシャン リェンシーシェン)で大成功しましたが、中国政府の政策で今年からアイドル養成番組が作れなくなったことも影響しているかも知れません。ただ、 爱奇艺 の経営赤字は以前からの体質で、人気のある番組を作れていても、それを会員収入にうまくつなげられていないことも原因だと思われます。会員数は1億人を超えますが、無料会員でもほとんどの番組が見れるため、VIP会員になるメリットが少ないようです。アイドル養成番組が作れなくなったことで、広告収入にも影響しています。

コロナの影響で、ネットフリックスやアマゾンプライムなど日本で動画配信サービスはむしろ活況を帯びていますが、中国の動画配信大手、爱奇艺(アイチーイー) 优酷(ヨウクー) 腾讯(タンシュン)はいずれも業績は芳しくありません。中国政府は今年の8月ごろから芸能番組に対し、共産党から心が離れているタレントや女性のような男性タレントの起用を禁じたり、アイドルオーディション番組などファンの行動を過度にあおる番組の制作を禁止するなどの政策を打ち出しています。その結果、筋書きの決まった、無難な番組しか制作できなくなってしまっているようです。

統制を強める中国政府ですが、「パンとサーカス」と言われるように大衆の支持を獲得するには娯楽も欠かせません。中国のエンターテインメント産業が今後どうなっていくか、興味があるところです。