教育産業への「意見」

この2週間ほどの間、中国株式市場は大波乱がありました。7月24日に政府からある「意見(意见)」が出されたのがきっかけです。その「意見」とは、義務教育段階の学生の、学校での学習の負担と、校外での学習の負担を軽減させるべきだ、という「双减政策」(二つの負担を軽減させる政策)です。それだけなら日本の「ゆとり教育」でも耳にした内容ですが、中国政府は超過激で、学校のカリキュラムを営利目的で教えるのを禁止し、教育事業はすべて非営利法人化、資金調達や上場も認めないというものです。厳しいを通り越して、教育産業そのものを認めないような内容です。中国語では「去产业化」、脱産業化です。そのため新東方を始めた中国の大手教育事業者の株式は、軒並み暴落しました。リンクを貼った記事にグラフがありますが、70%ほどの株価下落で、まさに崖から飛び降りたよう(Cliff Dive)です。
これにつられて、これらの産業に投資している、アリババ(阿里巴巴)、テンセント(腾讯)、快手などの香港市場の株式も20~30%ほど暴落しました。こちらは1週間ほどで持ち直したものの、元の株価までには回復していません。株式市場全体に影響を及ぼす大事件となりました。
中国でも教育熱の過熱が、教育にかかるコストの上昇を招き、将来にわたる貧富の格差の拡大につながることが懸念されています。しかし11兆円といわれる市場規模の産業を一夜にしてつぶしてしまうような政策は、趣旨は理解できるものの、その方法には首をかしげざるを得ません。日本のゆとり教育も教育の格差を解決できませんでしたが、このように無理やり規制をかけても、教育熱心な親の、自分の子供に少しでもよい教育機会を与えたいという気持ちは変わらないように思います。すでに、ある塾は子供を対象にした「クルージング旅行」を計画しているといいます。旅行なら教育事業ではない、という建前ですが、クルーザーの中では子供が自主的に勉強する、という建付けです。中国で昔から言うところの「上有政策,下有对策」(上に政策あれば、下に対策あり)です。

中国、「資本に乗っ取られた」教育産業見直し-モデル転換不可避 - Bloomberg