「人在江湖」③

中国には武侠小説というジャンルがあります。カンフー映画のような世界で、社会からはじき出されながらも、腕に自信がある主人公たちは「江湖」に集まり、お互いに戦いあって強いものだけが生き残ります。中国の人たちはみな武侠小説を知っているので、「江湖」というイメージが共有されているのです。
武侠小説を原作にした中国のドラマも多く、最近はNetflixなどで見ることもできるので、ご存じの方もいらっしゃると思います。ドラマの舞台が昔の中国なので、よく中国の「時代劇」と紹介されます。ただ、日本の時代劇は「水戸黄門」「大岡越前」のように、善と悪がはっきり分かれている話が多いと思いますが、武侠小説は善悪がはっきりせず、戦国時代のように登場人物が互いに戦いあうような内容が多いように思います。
そのようなわけで、小説の主人公が敵と戦い、時には敗れる姿になぞらえて、「人在江湖」が人生はままならない、という意味になりました。ちょっとした言葉の中にも、中国の悠久の文化が息づいています。