テンセントがNFTプラットフォームを停止に

今年の8月16日、テンセント(腾讯 タンシュン)グループの運営するNFTのプラットフォーム「幻核(ファンハー)」が、新たなNFTの発行を停止し、これまでNFTを購入した顧客に対しては、返品と代金弁済に応じると発表しました。2021年8月2日にサービスを開始してから、わずか1年でのサービス終了です。NFTは中国語で数字藏品(シューズー ツァンピン)とも呼ばれますが、芸術品やゲームの限定アイテムなど、デジタル空間上の資産をブロックチェーンの技術で複製できないようにすることで、価値を持たせたものです。アート作品のNFTが高額な価格で取引されたり、話題を集めています。

サービス終了の理由としては、より中核の事業に経営資源を集中すると説明していますが、背景には、コロナの影響で経済が失速する中、NFTの販売も当初の予想より振るわず、早めに不採算事業を清算しようという思惑があると思われます。それにしてもこれからの成長市場としてマスコミでも騒がれているNFT関連事業を、わずか1年で中止してしまうとは、中国企業特有の大胆さを感じます。これまで発行されたNFTは、罗大佑や唐朝など、往年のスターのものが並び、七〇后(チーリンホウ)と呼ばれる50代くらい世代を狙ったものが目立ちます。

もともとNFTや暗号資産がいま注目されている理由は、ブロックチェーン技術による集団管理で、国家やアマゾンなどの大企業の統制によらず、個人が自由に取引することが可能である点が革新的であるからだと思います。昨年中国政府は暗号資産の取引を全面的に禁止しましたが、そもそもNFTと中央集権的な中国政府とは、相容れないものなのかも知れません。「幻核(ファンハー)」が業績不振に陥ったのも、顧客が購入したNFTを個人間で売買する、いわゆる二次取引ができなかったからだと言われています。

中国のIT技術は時にはアメリカをも凌駕する速度で躍進を続けていますが、近年統制を強める中国政府の政策との摩擦が目立ってきています。今回の「幻核(ファンハー)」のサービス停止も、そのひとつかも知れません。