TikTokの挑戦

TikTok(抖音 ドウイン)が世界進出の勢いを強めています。アメリカではサンノゼ国際空港の向かいのシリコンバレーの中心地に6万㎡の事務所を契約し、ロンドンでは900人の求人をかけています。メタやグーグルがリストラを行っている時に、TikTokは逆に積極的な拡大策を取っているように見えますが、必ずしも順風満帆というわけではないようです。

ひとつは現地化の壁があります。全世界のZ世代のプラットフォームを目指すTikTokは、事業の現地化を進めていますが、中国式のモーレツな働き方が、欧米の従業員に受け入れられず、離職が続いているようです。ロンドンでも今年6月に集団離職する事件がありました。

中国のIT企業は日本のバブル時代を彷彿とさせる雰囲気で、サービス残業、休日出勤は当たり前です。「996(ジョウジョウリョウ)」という言葉がありますが、朝の9時から夜の9時まで働いて、週6日出勤するという意味です。私の世代からすると珍しいことではないですが、働き方改革以降に就職した世代からすると、到底受け入れられない話でしょう。

もう一つのTikTokが抱えている問題が、広告収入の伸び悩みがあります。2022年の全世界の広告収入のうち、TikTokが占めるのは1.9%に過ぎず、グーグルの29%、メタの21%、アマゾンの6.9%に比べて、大きく見劣りしています。TikTokのユーザーの大部分が25歳以下のため、広告の出稿主からすると、あまり魅力的ではないためだと思われます。ユーザーの若年化が、TikTokにとって両刃の剣となっています。

ただ、Z世代のTikTokの浸透度は強く、アメリカ市場においても、おいしいお店を探したり、ファッションを楽しむときはTikTokを使うという若者は多いです。アメリカ企業が独占するIT広告企業にどこまで食い込めるのか、これからの動向が注目されます。