打撃を受けた教育会社の復活

昨年7月に、中国政府は突然、営利目的で行う校外教育サービス、つまり塾を営利目的で運営することに規制をかけました。加熱する教育熱に規制をかけ、親の負担を軽減するという目的でしたが、あまりに急に規制がかけられたため、教育産業は大混乱に陥りました。中国の民間教育会社の最大手だった新东方(シンドンファン)は売上の80%が消滅し、時価総額も90%下落したと伝えられました。今年1月には従業員6万人を解雇したと発表しました。

その新东方が、いま復活を遂げているといいます。その手法は教育産業ではなく、TikTokを使った通信販売です。中国では直播带货(ジーボー ダイフオ)と呼ばれる売り方が爆発的な人気を得ています。直播带货(ジーボー ダイフオ)とはTikTokを使ったテレビショッピングのようなものですが、ライブコマースと翻訳されることが多いです。ジャパネットたかたにTikTokのスピード感を足したような感じで、次々と激安商品を紹介されると、ついつい購買意欲をそそられます。そのうえ中国のTikTok(抖音 ドウイン)はクリック一つで購買手続きに進めるので、1時間で億単位の売上を上げたという話もよく聞きます。

新东方が起死回生の策として、これまで塾のカリスマ講師だった職員に、直播带货の販売員をさせました。これまで学生向けに授業をしていた人が、お米やトウモロコシを売るのです。ちょっと違和感はありますが、これまでの販売員と違って、うんちくの豊富さや文学的な表現に、多くのファンがつきました。英語を交えたり、歌を歌いながら商品を説明することもあります。その結果、新东方は一日で1500万元(3億円)を売り上げることもあり、時価総額は50億元(1000億円)増加しました。経営者の俞敏洪(ユー ミンホン)は60歳ですが、大胆な事業転換によって、創業以来最大の危機を乗り越えようとしています。