突然BBQの聖地になった町

日本ではもうすぐゴールデンウイークで、旅行ムードが盛り上がっていますが、中国も5月1日の労働節から連休が始まります。いま、旅行先として一番盛り上がっている町が、山東省の淄博(ツーボー)です。SNS上では淄博烧烤(ツーボーシャオカオ 淄博のバーベキュー)の文字が踊り、新幹線(高铁 ガオティエ)にも「淄博烧烤」の文字が車体にプリントされ、車内にはBBQを宣伝するのポスターが所狭しと貼られています。

この淄博はもともとBBQで有名だったかと言えば、決してそうではありません。話題になり始めたのは今年の4月に入ってからで、それから突然人気に火がつき、「一夜爆红」(一夜にして爆発的に人気になった)と呼ばれるような、熱狂的に人が訪れる町になりました。大学生など若い人たちのグループが多いですが、ちょっと年配のグループや、小さい子を連れた家族連れまで、実に多くの人でにぎわっています。連休に入ったら、さらに混雑するでしょう。

このブームはもともとは地元の自治体の地道な広報活動がきっかけになっています。この地域には泰山という、歴史的にも有名な観光地がありますが、今年の1月21日から3月31日にかけて、大学生を対象に泰山への電車のチケットを無料にするキャンペーンを行いました。するとある大学生が「大学生の特殊部隊的旅行」と題して、3泊4日で泰山周辺の観光地を全部回りきる動画をあげたところ、これが8.5億回再生される人気動画になって、その中で淄博で烧烤を食べる光景が入っていたのです。

たまたま淄博は北京や天津などの大都市から比較的近く、コロナが明けてこれまで旅行を我慢していた人たちが一気に旅行に行き始めたタイミングにも重なったとはいえ、淄博がこれほど大ブームになったのは、中国でSNSの影響力が非常に大きくなったことの証しと言えるでしょう。