J&T Expressの上場

以前このコラムで紹介した极兔快递(ジートゥー クァイディー 英語名:J&T Express)が香港市場で上場しました。創業8年で中国5位の物流企業に上り詰めた极兔快递は中国最大級のユニコーン企業と言われていましたが、香港市場にとって、今年最大のIPO案件となりました。上場価格は12香港ドルとなり、35億香港ドル(約665億円)の調達となりました。

极兔快递の急成長のカギは、他を圧倒する価格の安さにあります。その分サービスはよくないと言われていますが、Eコマースを使って安い物をまとめて買いたい顧客にとっては、その安さが支持されているようです。并多多(ピンドゥオドゥオ)という、グループ購買で安く買えるしくみのサービスをしてる、中国の大手Eコマース企業がありますが、极兔快递は2021年に并多多の創業者に直接アプローチするという荒業で、并多多の物流の80%を受注するという事業提携を取り付けました。

とはいえ、极兔快递に課題がないわけではありません。最大の問題は収益力が低いこと、というより、大赤字であることです。2020年から2022年の累積の赤字は31.42億米ドル(約4500億円)に上ります。日本だったら、ここまで赤字を出して低価格戦略を突っ走っている企業が、上場するのは相当ハードルが高いと思います。共産主義国家である中国の方が、日本よりも規制がゆるいというのは逆説的ですが、そこに中国市場のダイナミズムがあるのだと思います。

さすがに、上場後の株価は期待されていたほど高くなかったようですが、极兔快递はもともとインドネシアで創業して、インドネシアの物流業界でナンバー1になってから、中国に逆進出してきた企業です。グローバル企業の強みもあって、全体としては企業体力があると思われます。极兔快递のこれからに、注目していきたいと思います。